創英社/三省堂書店刊「人斬りの業」、著者 柏木 龍世です。 刻、幕末。人斬りの異名をとった以蔵の業に満ちた悪と生を描いた一編。好評発売中の一編に加え、当ブログでは読み切り挿話を週刊で展開。
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 ご無沙汰してしまいました。龍世です。
 もはや冬、それも真っ只中。いや、もう年の瀬。
 私はそれほどクリスマスに入れ込む人ではありませんが、もはや
そういう季節。
 恋人たちの季節。

 その間に再来年の大河は、さぁ大変。とうとう龍馬役が発表され
ました。
 でもここで、主役としては岩崎 弥太郎であることをお忘れなく。
 まだ、チェックされていない貴方、是非とも大河のページへジャン
プしてみてください。
知らずに飛んだ方は、きっとびっくりされること請け合い。ずいぶ
んかっこいい竜馬になってしまいそうですよ。
 恋人たちの季節、ということで今回は龍馬を追いかけ続けた最後の
恋人、楢崎 お龍役を考えていきたいと思います。
 さて「龍馬伝」。
 中心人物像が明らかになってしまうと、そこからどんどん想像が膨
らんでしまいますよね。ちなみに私が思っていた役者さんとは違いま
した。
 そうなってお龍です。
 言わずと知れた龍馬の恋人(薩摩 霧島への新婚旅行がありました
から細君ということになりましょうか)ですね。劇的な出会いを果た
した二人は、紆余曲折あるも幕末乱世に見事、ゴールインするわけです。
 小説によっては多少の脚色はあるのでしょうが、まず名前からして
二人はどこかで結ばれていた縁だったのではないでしょうか。
 龍馬の卓越した才能とは、ずば抜けた行動力と天衣無縫な想像力。
それが融合して幕末に奇蹟がなったわけですが、やはりそういう男に
ついていく女も負けず劣らず、スゴい。
 お龍の実家である楢崎家は、もともとオランダ医の家でした。当時、
オランダ医学も含めそちら方面に属する人たち(現代で言う洋モノかぶ
れ)は「蘭癖」などと白眼視され、奇人の扱いを受ける場合もしばしば
だったそうです。
 それでも彼らは西洋の神秘を学ぼうとした先覚者であったかもしれま
せん。
 鎖国令が施行されていた当時、それでも外国では隣国の清、それと西
洋国ではオランダとは通商を続けていました。
 ですから当時の日本において、西洋列強を垣間見るには限られた狭い
窓しかなかったということになります。とてつもなく強大なその像を見
るにはあまりに狭い窓を通して、例えば楢崎医師も苦悶に近い想像力を
かきたてたことだったでしょう。
 そういう家に育ったお龍は前向きで活発な性格だったと伝わっています。
 お龍が物心つくころには、勤皇医として父が邸内に多数の志士をかく
まうようになり、そういう光景は彼女にとってみればそれほど珍しいもの
ではなかったのでしょう。
 激変する乱世に立ち向かっていく男たちに囲まれて、彼女は活発な青春
期を過ごしたと思われます。
 ですが、その過程で決定的なきっかけがお龍に訪れます。
 井伊 直弼が断行した安政の大獄は、泰平の江戸期には過激にして厳然
たる政策であったことは間違いないでしょう。
 この渦中に巻き込まれた人物で幕末維新に大きな影響を与えた人物は数
多おりましたが、中でも長州で私塾を構えた至高の学士 吉田 松陰は、
当時では誤審のような独断で処罰されてしまったといいます。
 この大獄の津波がお龍の身にも襲い掛かります。
 父 将作は、不穏な洋学医として危険視され遂に投獄、更に極刑に処さ
れてしまうのです。長女のお龍は、理不尽な時代を大いに呪ったことで
しょう。
 吉田 松陰を大獄の専横で失った長州の若者たちは、その時、自らの命
をも引き換えに倒幕を誓ったといいますが、同じく最愛の肉親を失った
お龍の想いとはどれほどのものだったか、これは簡単に推し量ることは
できません。
 活発で陽気な青春期から一転して、当時では妖しいまでの美貌を得るに
至った彼女には決して拭い去れない負の心情が宿ったわけです。
 そこへ、白馬に跨った王子のように目の前に現れた坂本 龍馬を彼女は
どのように見たのでしょうか。
 生まれは天保12年(1841年)6月6日、天保6年11月15日生まれの龍馬と
は6つ違いとなりますから、ちょっとした年の差カップルということにな
りましょうか。
この誕生日から話を飛ばして、没年について二人はとんでもない偶然に
翻弄されたことになります。
 お龍、維新後は身を転じて幸せとは呼びがたい生活を送ったといいます。
 酒に溺れひどく身体を壊した時期もあったようです。
 それがこうじてか、明治39年(1906年)11月15日、病没。
 さて、この日付に注意。
 天保6年11月15日、それと慶応3年11月15日。
 坂本 龍馬の生誕の日と最期の日ですね。
 やはり二人は、何か眼に見えない縁によってつながっていたのではない
でしょうか。

 それでは、これまでの作品に甦った二人を紹介してまいります。
 1968年    大河ドラマ「竜馬がゆく」。
 司馬作品のドラマ化。長編小説を余すところなくじっくりと描いた作品
となりました。
 竜馬役は、北大路欣也さんでした。
 竜馬の実像とは一見して消極的で控えめな部分を感じますが、それでも
切れ長に光る瞳には、「天が遣わした龍の化身」を思わせる静寂の覇気と
いうようなものを感じます。
 そうなって北大路 竜馬はその覇気、凄みという点では満点の仕上がりと
なったのではないでしょうか。
 その竜馬が恋をした女性を二人あげてみたいと思います。
 お龍役には、浅丘ルリ子さん。お田鶴は三田佳子さん。
 お龍と竜馬は京都で劇的な出会いを果たしたわけですが、お田鶴は郷里
の土佐で恋焦がれた憧れの女性でした。
 お田鶴は、竜馬の実家の上司の家に生まれた言わば令嬢で、到底、叶わ
ぬ恋をそれでも竜馬は追い続けたといいます。
 恋をする男、竜馬。追いかける恋愛。
 これに対して、お龍と竜馬の関係は、惚れられた男が追われる恋愛関係
ということになるわけですね。
 この対比が実に面白く、また浅丘 お龍と三田 お田鶴の対照的な個性が 
作品にメリハリを醸していると思います。
 続きまして、白黒フィルムです。 
 1970年 東宝映画「幕末」。こちらは司馬作品の映画化となりますね。
 龍馬役には、萬屋錦之助さん。
 そして何と、お龍役には吉永小百合さん。大豪華のキャストにまず驚き、
更に迫真の殺陣に感動。この作品では新撰組等は明確な悪役として描かれ
ており、それを萬屋 龍馬がばったばったと斬り倒すという場面が見もの、
ですよ。
 こちらからフルカラー映像の作品となります。
 1989年 TBS大型時代劇SP。
 龍馬役には、当時、アクション俳優として活躍されていた真田広之さん。
これはちょっとイイ男過ぎませんか。それでも龍馬の溌剌とした性格を見事
に真田さんが演じられております。無論、派手な殺陣シーンは見もの。
 イイ男には、やはりイイ女がつかないと、ですね。
 お龍役には名取 裕子さんです。
 幕末当時、妖艶なまでの美貌と噂にのぼったお龍ですが、名取 お龍は、
そこのところをよくよく描きだしているのではないでしょうか。
 はっきりとした龍馬、お龍の恋愛像が楽しめる作品だと思います。
 ミレニアムを越えても龍馬人気は衰えるどころか一層、増してまいります。
 2004年 TV東京新春ワイド劇場「竜馬がゆく」
 竜馬役には歌舞伎俳優の市川染五郎さん。長身で純日本人的な風貌の市川
さん演じる竜馬は、確かな演技力に裏づけされた迫力がありましたよね。
 お龍役には内山里名さん。
 私は、このお龍という女性は派手な美貌とは裏腹に、恋一途でひたむきな
性格ではなかったのかなと思うのです。さっきいたと思ったら、もう残り香
すらなく飛んでいってしまう竜馬を相手にお龍はよく付いていきました。
 可哀想だなと思った場面は、禁門の変で業火の都と化した京都に舞い戻っ
た竜馬が、お龍を心配して寺田屋を訪れる際。
 よほど連れて行こうかと悩んだ末に、竜馬は身支度まで命じたお龍を残し
て、伏見の廻船に乗り込んでしまったわけです。
 そういう場面の女性の心情とは、これは簡単に語ることなどできません。
 それでも、お龍は諦めずにその後、神戸の海軍学校やらにまで押しかけま 
したからね。スゴいですよ、実際。
 そういうひたむきで健気なお龍を演じた内山さんが、よかったなぁとしみ
じみ思うわけです。
 作品自体もメリハリ、極めが心地よく、12時間ドラマですが、飽きること
なく最後まで楽しめるものになっているのではないでしょうか。
 最後は大河ドラマでしめてみましょう。
 2004年    「組!」。
 龍馬役には江口洋介さん。ワイルド、大胆、ユーモアと三拍子がきっちり
揃った龍馬がこの作品で楽しめると、身勝手ながら信じて止みません。個人
的には、過去の作品と比較しても江口 龍馬が最もしっくりきますね。
 その龍馬の相方は、麻生久美子さん。どこかにあどけなさや幼さを残した
麻生さんの演技、またそれを浮き立たせる、例えばお登勢(戸田 恵子さん)
との遣り取りがどんぴしゃ。
 1年という長いスパンで魅せる大河ならではの楽しみをこのお二人が一層、
増していると思いますね。



 さてさて、今回も発表とさせていただきます。
 それでは。
 いよいよ。
 発表、木村 佳乃さんです。
 今回の結論というのは、ほぼ、お龍というキャラクターを重視してのも
のですね。
ちなみに、既に発表となった龍馬役の福山さん(あ、言ってしまった)との
兼ね合いは全くありません。この発表よりも前に、龍馬役はこの方だ!とい
う俳優さんが頭にあって、そちらとの対照という部分は少なからずあります。
 それでも、お龍という女性をしばらく考えてみての結論ですね、やっぱり。
 思い立ったのは、さるおしゃれなトーク番組にて。
 木村さんって方は、普段、まったく女優っ気のない方だそうで、地のまま
素のままありのままというのがスタイルだそうでして。
 番組中では、さる木村さんのご友人という方から寄せられた証言(?)が
いくつか紹介され、その中で、
「ビーサン、ジャージで銀ブラ」事件なるものが。
 いいしょうか、銀座にお出かけするのに世の女性はどれほど頭を痛めてい
ることか。それをビーサンとジャージ(PUMAだったそうで)でやっつけてし
まうんですよ。
 驚いたというより、いやぁ木村さんらしい、とふと思ったんですね。
 飾るべきは飾る。普段は、気ままに思うまま。自由自在ってことでしょうか。
 また夏の頃、浴衣女優競演という企画が週刊誌であって、そこで見つけた
佳乃流浴衣の着こなしも凄かったですね。何だか、秘密社交界に紛れた浴衣
美人という雰囲気で、蝶を模したメイクに、ラメパープルの帯と雪駄の鼻緒
が同色で、非常にインパクトのあるお姿でしたね。
 そういう、素で「やってしまう」ところが、いかにもお龍っぽいな、と。
 それと、木村さんご自身の誕生日にも秘密がありますね。
 昭和51年4月12日。
 辰年です、まず。
 これも以前、さる番組で木村さんのお誕生日の話になり、その中で月や日
にちにも干支のような巡りがあるということが紹介されていました。
 するとこの4月12日というのはいずれも龍の月と日だそうでして、つまり
スリードラゴンを生まれながらに持っているということらしいのです。
 これが決定材料というわけではないですが、ここまで龍に縁がある女優さん
もそうはおられないでしょう。
 もちろん、アルカイックな笑顔や力強い瞳、そういった外見的要素もばっち
り、では。

 というわけで、龍に魅入られた幸運の女神 木村 お龍に、どうかひとつ!
かしく 龍世
 夏と言えば、海。
 海と言えば船。
 船、、、黒船。
それに幕末とくれば黒船来航となりそうですが、そこは引っ張り戻して徳川幕府海軍奉行から明治の海軍卿へ上り詰めた勝 海舟しかないでしょう。
すいません、ひどいこじつけでした。
 それでも納得していただいて、ひとつ。
 さてさて、龍馬伝です。言ってもまだ再来年のお話ですからHP上でも確かな進捗は見られませんね。大枠は固まったような雰囲気ですが、具体的なシナリオなどはまだまだのようで。しかし、それほど今回の龍馬伝には力が注がれていると考えて間違いないようです。だって、日本人が一番好きな日本人についての大河ドラマですから。
 ちなみに来年は愛に生きた戦国武将 直江 兼続。越後の虎二代に仕えた名将で知勇兼備の人物ですね。こちらはもう妻夫木フィーバーで今から結構、大変なことになっています。
戻って、勝麟ですな。
 私見ですが、龍馬を幕末の巨魁たらしめたのは、この勝 麟太郎 義邦をおいて他に考えられません。龍馬が麟太郎に出会わなければ、恐らくあれほどの大舞台(薩長同盟は現代でいうところの自民民主の連合など、いやもっと大規模な政治的統合?)はなかったでしょうし、曇天に覆われた幕末の刻はずるずると長引き、日本の外形自体が異なったものになってしまったのではないでしょうか。
 しかし現実には、龍馬が勝に出会って幕末乱世に奇蹟という奇蹟が連なっていき、その中に薩長の大連合や江戸城の無血開城が成立したわけですね。それでも最後には戊辰の役という悲惨な暴挙が具現化してしまうのですが、それとて250年余り続いた旧時代の膿が排出された、それも2年間という時間で処理できたというところを見れば按分は保たれたのではないかと思います。
 幕末の乱世はおよそ16年間という短期で終焉し、日本はアジアにおいては抜きん出て近代化の歩みを踏み出すことが出来たわけですね。その過程で龍馬が成した功績はあまりに大きなものであったと考えます。
 そう考えれば、龍馬はまさに、
「天が遣わした龍の化身」
とは、司馬 遼太郎氏の評に値するのではないでしょうか。
 長らく深海に身を委ねていた伏龍が宝玉を手にして天龍となった。その宝玉こそが勝 麟太郎であると、結構まじめに断言してしまいます。
 これまで龍馬を主人公にした作品は多く存在します。
 俳優さんによってそれぞれの龍馬像が描かれ、同時に勝 海舟像もある。
 もう、この二人は阿吽の一体ですね。龍馬が笑えば勝も光る。
 簡単に師弟関係とも言い切れない密実な間柄の二人ですが、それも俳優さんによってまるで違うものに見えてしまうところが不思議であり、味わいですね。

 ではではいってみましょう。
 まずは今年の大河ドラマ「篤姫」では大御所 北大路 欣也さんですね。
この勝 欣也はシブイ。ちょっと思うのは、勝 海舟は締めるところはぴしっとするが、大方は巻き舌の江戸弁でそこいらのおばちゃんなんかとも気さくに話してしまうような軽快さが実体だと思うのですが、そうなると勝 欣也はやっぱり渋い。
 まあ、今回の話に登場する勝はそういうぴりっとした場面が多いですからね。
 続いて。
 2004年大河の「組!」でございます。個人的にはこの時の勝がもうぴったり感で満たされましたね。野田 秀樹さんでした。
 江口 龍馬のひょうきんなキャラも注目でしたが、勝 秀樹の登場場面がまたよかったなと思います。
流山に屯集した新撰組は鳥羽伏見の戦い以来、敗走を重ねもはや流浪の侍集団となってしまった。そこでとうとう首領の近藤は時代の機微を悟り、投降を決意するわけですね。
 無論、切腹も覚悟の上で敵陣に大久保 大和として乗り込んでいくのですが、そこで大和の正体が露見してしまう。
 そこで立ち上がった義弟の土方は、薩長の官軍を向こうに回しても舌鋒を突き立てる勝に近藤助命を懇願するのですが、
「オレにだってできねぇことはあるンだよ」
 確かに本音を吐いた勝 秀樹の表情と台詞回しに、きましたね。
 江戸っ子らしい振る舞いを見事演じた野田 秀樹さんは流石に凄い。
 どうも大河続きですが、次は日テレ年末時代劇SPに、その名も「勝 海舟」がありました。1990年のOn Airでしたね。
 こちらは勝が主役ですから、77年の生涯をじっくり描いた作品。
 若い頃の貧乏暮しから抜け出して幕府官僚になって活躍する壮年期を田村 正和さん。
 明治維新を迎えた日本をオールバックの髪型で飄々と生きていく熟年期は田村 亮さん。
 親子共演で見事に勝の一生を描いてくださったのではないでしょうか。
 現存する写真を見てもおわかりのとおり、勝 海舟は結構なイケメンなんですな。ちょっと背は低かったという話ですが、それでも勝 正和のはまり具合は絶妙ですよ。アクが強くて我を通す勝と、俳優 田村 正和とはけっこう共通点が多いという評をネットで見たことがありましたが、確かにそういう部分を僕も感じます。
 やっぱり古畑 任三郎の田村さんを思い浮かべてしまいますね。
 その勝がいい歳のとり方をして、田村 亮さん。この配役も演出もいいですよね。
 またまた大河ですが、こちらはずいぶんと昔の作品です。やはり「勝 海舟」。
 1974年の作品となります。
 この年の大河は大荒れで、主役交代はあるわ、脚本はひっくり返るわで大変だったようです。作品としては秀逸なものに仕上がっていると思いますが、その舞台裏はお祭り騒ぎといった様子だったといいます。
 前記の日テレSPのコンセプトとは違い、こういった事情で主役は早くも前半で交代。
 勝 海舟役は渡 哲也さんから松方 弘樹さんへとバトンタッチ。渡さんの急病が理由とされていますが、どうもそれは表向きのものであったようです。
何故ならばその後に引き継ぎの松方さんが発した、
「NHKはモノを作るところじゃない」
という一言が物議を醸したからですな。
 一時は撮影続行も危ぶまれ、更に脚本を担当した倉本 聰さんもそのあたりの軋轢からか東京を去って、こちらも中沢 昭二さんへと受け継がれます。
 異例続きの大河は大荒れとなりましたが、それでも高視聴率(MAX30%をマーク)のうちに幕を閉じました。
 ちなみに龍馬役は藤岡 弘、さん。更にショーケン 以蔵とやはり豪華キャストを揃えるあたりは大河ドラマの強みですよね。
 当然のように龍馬が以蔵を連れて勝の許を訪れ、護衛役の話を切り出すわけですが、このお三方が揃った場面はあまりに豪勢。
 
 と分析してみますと、これまで勝役はシブイ感じの男前が演じておられます。
 さて参りましょう、今回も。
 考えますに、勝 麟太郎という男は確かにひょうきんで大抵の物事には動じない肝力を備えた人物であると思いますが、それよりも「親分肌」の任侠人ではなかったかという視点です。
 先見性にも長け、時代の流れが持つ巨大な勢いというものも肌身で感じ取る特異性も備えていたのではないでしょうか。しかし、これは勝の顕在化した才能の一端、であると考えてしまうのです。それでは勝 海舟の本質って何なのか。
 思いますに、生まれも育ちも江戸の下町、お祭り大好きの騒ぎごとなんか持って来いという人物ではなかったのか、ということですね。
 江戸からすればとんでもない田舎の土佐からやってきた朴訥な青年を一番弟子にして可愛がり、目をかけてこを入れて大成させ、時代を動かすまでの大物に育て上げた。
 その過程では時代の要請でいきなり立ち上げられた長崎、築地の海軍伝習所で粉骨砕身の努力を惜しまず、幕末の乱世を疾駆する駿馬たちをも巻き込んでいきます。榎本 武揚、永井 尚志などはその代表格となるでしょう。
 ようは、
「勝さん、勝さん」
と若い者から慕われて、よしよしやろうかと自ら先頭きって走りだす。まあ、こういう性格というかキャラクターは幕閣の上司には大してウケがよくなかったようですが。
 更に僕が、勝 海舟を尊敬して止まないワケは、限りない可能性を秘めた龍馬のような若者たちを心底から愛し、その先にとんでもない災厄が待ち受けていようと一切、気にせずとことんまでやり抜いてしまう気風のよさがあるところです。若い可能性に自己犠牲をかけてやってしまう実行力。
 ようやくの思いで立ち上げた神戸海軍塾に龍馬を塾頭に据え、駆け出した勝と塾生。
 神戸は築地に続き第三の海軍局となり、勝もこの頃には日本の海軍を一手に引き受ける奉行へと昇進しました。
 しかしそれも、ほどなく急転直下の暗転劇に見舞われることになります。
塾生に北添 佶麿と望月 亀弥太という龍馬を追っかけてきた後輩がいて、彼らは龍馬と勝の留守に絶対禁止の志士活動に突進し上洛、池田屋の会合に席を連ねました。
 そこへ新撰組が突入して、騒動はとんでもない惨劇と化します。
 騒動の報告が京都守護職を通して幕閣上層部へと通達され、恐らくは勝の存在を疎ましく思っていた人物(例えば政敵に近い小栗 上野介などなど)の暗躍により海軍塾との関係が厳しく指摘され、果てに勝は自分でも予想していたとおり罷免の憂き目をみることになります。
 それでも、あぁせいせいしたという顔つきで赤坂の自宅へ颯爽と帰ってしまう飛ぶ鳥跡をにごさず的な振る舞いが、いかにもという感じですよね。
 そういう、粋でいなせな大人の男って誰でしょう?


 これはちょっと驚かせてしまうかもしれませんが、全く龍馬と勝の関係を思わせる組み合わせがあったんですよ。
 

 発表、桑田 圭祐さん、です。
 そして更に返す刀で桑田 勝と組むのは、Mr.Childrenの桜井さんです。
 二人のコラボが実現して発表された「奇跡の地球(ほし)」は名曲ですが、その場面を思い浮かべると僕の頭の中では龍馬と勝の二人が出てきてしまった。
 ただし、これは桑田 勝との現実的な組み合わせとしてのお話でこれが再来年の大河で実現するか否かは別のお話。
 今年、惜しくも無期限の活動休止を発表したサザンオールスターズ。この一大事については慨嘆の至りという方も多いかと思います。それでも夏にはライブで数万人のファンを熱狂させたサザンオールスターズ、そして桑田 圭祐。
 そのサザンが常に日本を代表する一級バンドとして存続し得た要因の多くは桑田 圭祐へと集約されていくのではないでしょうか。
 無論、バンドメンバー個人の才能や力量、技量は一級であると素人ながら思うところですが、その大きな才能を綺麗に配置して、まさに南極のオーロラが層をなす夜空を彩る群星へと昇華させたのは、桑田さんの人間力が成した業ではないでしょうか。
 それと桑田さんの飾らない個性と海辺育ちでからっとした性格も勝 海舟にリンクするように感じます。
 また実現性という面でも。
バンド活動を休止した分、更に軽快さを増した桑田さんがひょっとしたら大河進出という可能性も十分かんがえられるのではないでしょうか。どうぞ想像してみてください。
 年末ライブではげズラをかぶってワルノリする桑田さんが、ちょん髷結ってべらんめえ口調でまくし立てる。こりゃあ、面白いじゃありませんか。
 今回の「龍馬伝」、脚本はドラマ『HERO』『ガリレオ』『CHANGE』(すべてフジ系)など人気ドラマを手がける福田靖氏が担当ですよ。
福田氏は「今の時代にあてはまる生々しい龍馬を描きたい。史実を基に想像した面白いストーリーを書きたい」と自信をみなぎらせております。
 報道陣から気になるキャスティングについて尋ねられると、プロデューサーの鈴木氏は「きましたね…実は全く決めておりません」と苦笑い。
 それでも何たって、大河ドラマをChengが合言葉ですから。

 また、今回は日テレ方式で維新を迎えた後の勝についてもひょっと思いをめぐらせてみました。
いました。
 もう、生き様が勝そのものという人が。
 フライデー事件、顔面麻痺、そして日本人では初の金獅子賞をとった男。
日本を騒がし世界に名を馳せたその男、ひょうきんにつき要注意と。
 僕のブログではもう何度もその名が出ていますが、笑いの戦略家 北野 武さん、です。
そのまんま、たけし軍団の「殿」であり、今や「世界のKitano」となった武さんの生き様を今更くどくど語るべくもありません。
 ただもう、僕の中では勝の再来という感じなんですね。語る言葉は要らないとまで思ってます。東京は下町育ちの武さんと勝とはそういったところでもスピリットが交錯しているのではないかとも。
 ちなみに武さんは、大島 渚監督作品「御法度」では新撰組の鬼副長 土方 歳三を演じた経緯がありましたが、その作品を見て僕は、こりゃちょっと違う。けれども、そのいでたちの武さんが違う場面に登場したならば、もう勝 海舟役しかないだろう、と。

 いかがでしたでしょうか。
 これまでの勝役の俳優陣とは一風変わったものになってしまったかもしれません。
 それでも桑田 海舟、ビート勝。
 
草々 龍世

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

 まだまだ暑すぎる夏が連続しております。
 前回の以蔵編はいかがでしたでしょうか。皆さん、それぞれの以蔵像がおありだと思いますが、どうぞ楽しんで是非、参加もしてくださいませ。
 再来年の大河ドラマ 龍馬伝につきましては現段階からあちこちでPR活動が展開されているようです。
 そのページ上では、
「大河ドラマのチェンジを狙います」
という制作陣の力強いコメントを踏まえ、ひょっとしたらの可能性も含め、『この人だ』という俳優陣を今後も考えてまいります。
 さて、今回は武市 半平太。
 以蔵の師匠にして、龍馬の盟友。土佐一藩の勤皇化を画策した当代の俊英。
 文武に秀でた半平太は時代の混迷をいち早く感受し、江戸期の泰平を享楽し安寧を貪ってきた山内武士への復讐と、長曾我部 一領具足の復権を念頭に幕末早期から勤皇活動に奔走します。
 この点からすると、例えば同国の龍馬や中岡よりも一世代先輩で、明治の元勲である長州の木戸 孝允(桂 小五郎)や薩摩の西郷 隆盛、大久保 利通らよりも一歩先んじていることになります。
 ちなみに文久元年(1860年)夏にあったという薩長土の秘密会合(江戸 麻布の長州藩邸にて)は、長州志士らの起案といいます。その席上に、土佐志士を代表して半平太が出席しています。長州では桂、久坂 玄瑞、高杉 晋作、薩摩からは樺山 三円という顔ぶれでした。
 そうなると新撰組の前身であった浪士組を結成して上洛を果たした出羽 庄内(山形県)の清河 八郎らと同期ということになりますか。
 その後、土佐に勤皇党を結成し土佐藩政の影に暗躍をし始め、参政 吉田 東洋暗殺へと踏み切り、政局となった京都に天誅の嵐を誘う大物志士にのし上がっていく。人斬り 以蔵がその名を冠せられて暗殺に挺身する裏にはほとんど武市の姿があったようです。
 それでも白札という灰色的な家格を持つ半平太は自力で土佐藩の政局にも進出し、花形である京都留守居役も務め、その政治的辣腕は十分評価に値するものであったということです。
 背後から光を浴びてその顔を隠す影の大物志士という裏面と正面から脚光を浴びて涼やかな笑みを浮かべる能吏という二面性を秘めていた半平太。
 姿貌は六尺の長身を誇り、武張った半平太をこれまで何方が演じてこられたのでしょうか。近年から遡って紹介してまいりましょう。
 まず、例の舞台「IZO」では田辺 誠一さん。
 シャープな輪郭と怜悧な眼差しの田辺さんが演じた半平太とは、思うに彼の前者的性格をよく表現されたのではないかと思います。
 勤皇党の首領として存在感を発揮していた半平太は時に冷酷非情を通り越して、邪魔者は排除するという徹底した排他主義を曲げない性格もあったようです。その一例が吉田 東洋の暗殺だと思うのですが、テロリズムと暗殺に手を染めてしまった半平太は、そこから人格に大きな歪みを生じさせてしまったのではないでしょうか。
 これに対しては龍馬も散々に東洋暗殺に反論するのですが、それは龍馬がモノの理というものを感覚的に察知していたからでしょう。
 結局、その一件で半平太と龍馬は訣別することになるのですが。
 さてさて、田辺 半平太について。
 まず田辺さんのスマートな容姿と、鏡心明智流で鍛え上げられた鋼の肉体を持つ半平太の格闘家めいた容貌にはだいぶ格差は感じられるかもしれません。
 また、龍馬が「武市のアギ(えらの張った彼の顔)」とからかっていたように涼やかな男前というよりも、現存する写真(写実画とも)からも推察できるように額の汗がきらりと光る精悍なイイ男という感じだったのではないでしょうか。
 ただこれは舞台上での見栄えの問題もあったでしょうから、以蔵役の森田 剛さんとはしっくりとくるキレイめな花形に仕上がったのではないかと思います。
 
 「IZO」繋がりで映画「IZO」半平太は、美木 良助さん。
 時に険しく思いに耽る半平太、そして怒気を放って、
「以蔵っ!」
と怒鳴るシーンは衝撃的で、その印象は僕の著作にも色濃く反映させていただきました。
 ちなみに司馬作品の代名詞「竜馬がゆく」でも描かれておりますが、白札家格の長男坊であった武市には戦国時代では四国を統一した長曾我部侍の末裔という意識が強かったようで、そのせいか同じ一領具足の末裔とはいえ足軽の家に生まれた以蔵をだいぶ差別して扱っていたともいいます(土佐 勤皇党の署名に以蔵の名はありません。それは後の展開を考え敢えて人斬り 以蔵の名を隠したのか、差別意識からなのかはどうでしょうね)。
 半平太ファンの皆さんには書きづらいところでもありますが、そういったリアルな裏半平太像についても著作でも言及しておりますし、当作品でも濃厚に描かれております。
 その美木 半平太は、かなり真に迫った演技と際立った演出とであっと驚く新半平太像を浮き彫りにしたのではないでしょうか。
 主人公にして相方の以蔵役には山中 一也さんがこれまた迫真の演技をされるものですから、二人の場面には常に当時の緊張感を再現したかのような引き締まりを感じました。
 ちなみに最後には時空を超越した半平太VS以蔵の一騎打ちという場面もあり、これは見ものですな。時代映画として冷静に眺めるよりはいっそ、稀代のエンターテイメント作品として見入ってしまった方がより本作品を楽しめるのではないでしょうか。

 続きましてこちらも大河ドラマですが、「新撰組!」半平太は、三谷 幸喜脚本(演出)ということもあってか意外な人選、更には思わずぴったり感という、デビ 半平太。
 まずこちらの半平太は、デビット 伊東さんのしっかりした容姿がぴったり(笑)。月代を剃って、佇むデビ 半平太の、
「本日より土佐に勤皇の旗標を掲げ 云々」
という台詞回しなんかは、それはもうという感じでした。ダイジェストでぱっと写った場面でしたが思わずくすっと笑ってしまいました。
 例の半平太画像と見比べると、
「はぁ、なるほど」
 頷いてしまうことうけあい。
 この時、以蔵は登場しなかったと思いますが、そうなって相手役は江口 龍馬。この龍馬が非常に爽やかで快活で、デビ半平太と合わさるとステキな味わいになっていたように思います。
 それやこれやで、「組!」はまさに現代版幕末青春群像をよく表現した長編作品であると感じますね。その中でぴかっと光るデビ 半平太というわけでした。

 さてさてさて、それでは「伝」半平太はダレということになりますが。
 これはですね。非常に現実味(つまりそうなるのではないかという予測が勝手にワクワクということですな)を帯びた人選ではないでしょうか。(強)
 ニヒルで冷酷で、ちょっと残忍な半平太。
 友人想いで、部下をしっかり引っ張っていく頼もしい半平太。
 陰と陽を具有した半平太の真実をしっかり表現できる大人の俳優さん、ですね。


(引っ張りすぎ)
 発表、堤 真一さんです。
 堤さんはもう、言わずと知れた「三丁目の夕日」はもはや国民映画との声もあるほどで、その作品で鈴木オートの頑固主人という役柄が定着してしまっているのではないでしょうか。〈ちょっと関係ない話ですが、僕の住まいも三丁目。しかもお隣には鈴木さん。その鈴木さんは現在、ヨーロッパバイクを製造販売するバイク店。更にしかもそこからは間近に煌々と輝く東京タワーが見えてしまうのですよ。〉
 頑固だけど面倒見がよくて、優しいからそれに惹かれて商売もうまいこといってしまう。
 それでも自分の仕事には熱心で厳格、それを曲げずにずっとひた走る主人の映画での姿とは、ちょうど江戸で剣術留学を果たし瞬く間に塾頭へと昇り、土佐で瑞山塾を開いた頃の意気揚々たる背中を現しているのではないでしょうか。
 陽の半平太を表現する鈴木オート主人の堤さんということですね。
 ここでもう一作品。これはさる民放の連続テレビドラマでしたが、主演は草薙 剛さんでした。この時、堤さんは草薙さんの主たる相手役で、IT系大企業の社長を演じられていたのですが、この時の眼差しが、いい。
 その顔で、
「以蔵、仕事だ」
 そう言いそうな、冷たくて有無を言わさぬ強さをたたえた眼差し。
 ぞくりとくる陰の半平太をも堤さんならば、見事に演技されるのではないでしょうか。
 それと容姿も。いかがでしょうか、ふっと思い浮かんできませんでしょうか。
 更にこの点でいうと、僕の勝手な配役で恐縮ですが、金子 以蔵との背丈のバランスや画での見栄え、そして実年齢の関係を考慮すると。さあ、どうでしょう。

 まったく、ひょっと書き出したかと思えば暫くとんと音沙汰もなくなってしまう本ブログですが、どうぞ末永くお付き合いください。
 ちなみに龍馬はダレか。
 これは既に思い浮かんでしまったのですが、まだまだ先延ばしすることにしました。
 だってまだまだ弥太郎もいるし、女性陣では長崎の大浦 慶、おりょうなんかも重要でしょう。
 そちらの発表がある頃にNHK大河で正式発表があったとしても、勝手に進めてまいります。
 草々 龍世



 もう僕の作品とは全く関係はなくなってしまいましたが、そういうことはおいといて。2010年大河ドラマ「龍馬伝」。幕末ファンは必見となるでしょうね。
 さて、ここから絡んでいきますが、
「以蔵」はどなたが演じることになるのでしょうか。
 その前に歴代の以蔵役を辿ってみましょうか。
 今年の正月には劇団 新感線主宰、舞台「IZO」が東京は青山、大阪は心斎橋で上演されました。
 更に遡ると2004年のカンヌ映画祭招待作品の同じく「IZO」がありましたが、どうやらこの二つの作品は関係が薄いようです。
 もっと更に遡ることウン十年前、その名も映画「人斬り以蔵」という作品もありました。
 
 早速、上から順に役者さんを紹介してまいりますと、
 舞台以蔵はV6 森田 剛さん。
 新鮮且つ爽やかなアイドル的なイメージの森田さんが目に染みるほど男臭い以蔵を、
「体当たりで演じます」
とのメッセージどおり、快演されたということです(すみません、都合で直接みることはできませんでしたのに勝手を言っております)。
 と、この知らせを受けて、
「ちょっと細すぎる」
 第一印象でした。
 やはり以蔵というと180cm近くの巨漢で、しかしそれが分厚く凝縮されているという想像図があって、それからすると森田さんは華麗に踊るアイドルというイメージが強くて。 
それでも新しい以蔵の図になるのではないかなとも思いました。
公演は好評だったらしく予約チケットはもちろん完売だったとのこと。
 続きまして。
 ミレニアム以蔵は、中山 一也さん。
 ちなみにこの映画をツタヤで見つけた時、僕の作品は大まかに書きあがっておりましたが、
(こりゃあ凄い)
 いやこれは設定から台詞から何から、ちょっと驚かされましたね。
 こんな映画(幕末モノで)アリなのか?
 内容は敢えて書きません。ただもう、凄いの一言に尽きると思いますね。あまりに凄いので僕のメルマガでも作品を紹介させていただきました。
 ちなみに中山さんは他の幕末モノの作品でも以蔵を演じており、僕なんかは最近、中山さんの骨太な以蔵がしっくりくるように思えてなりません。
 中山さん演じる以蔵、もがき苦しみ叫び声が止まない以蔵というのが僕の著作にも影響していると思います。
 更に続く。
 昭和以蔵は、大御所です。勝 新太郎さんが演じてらっしゃいましたよ。
 演じるという観点ではダントツではないでしょうか。
凄みさす眼差しなんかは空想していた以蔵の表情というものをより強調して想像させてくれます。
 勿論、殺陣も凄い。こちらは座頭市シリーズのバッサリ感の連続というものとは違う。
 ちなみに僕は古流の剣術を習っていますが、そういう観点からしますとゾクリとくる太刀筋に見入ってしまいますね。
 座頭市のイメージが強い勝さんですが、こちらはまた一風変わった力漲る感が満点となっております。

 と、ここまできて大河以蔵は誰?
 

 考えました。というより思い出しました。
 北野作品にいきついてしまったのですよ。
「Kids Return」という映画をご記憶でしょうか。
新人だった安藤 正信さん主演の映画で、いつも主演、監督、脚本と三役揃いぶみの北野氏がいっさい画面に登場しない作品はこちらで二本目(もう一本は「あの夏、一番静かな海」かな)となり、この点で僕はちょっと残念でしたが、この中で一つ気になる台詞のやりとりがあった、
「マーちゃん、オレたちもう終わっちゃったのかな」
「バカヤロー。まだ始まっちゃいねぇよ」
 この単純極まったやりとり、ピンと思い出したんです。
 そのマーちゃんが、今回僕がだした答えです。
 金子 賢さん。
 表情や背格好といった外面的な部分でも(これは多分に反町以蔵が影響しているのでしょう)、しっくりくる感じがしましたし、何よりこの映画の中での一瞬のやりとりでピタリときましたね。
 高校生から付き合いのあった二人は、大人になって全く別の方向へと進んでいき、映画ラスト近く、通っていた学校のグランドを自転車に二人乗りしながらこのやりとりをするのですが。バカばっかりの高校時代を思い出しながら。
 そう、僕の想う以蔵とは、まだ何も始まらないうちに死んでしまったような気がするんですね。数多くの天誅事件に関与しまた実行犯として暗躍した以蔵の短すぎる人生は、自らが生きようとして生きていた人生ではなかったんじゃないか、ということです。
 そういう思い入れがあって書き上げた人斬りの業なんですよ、実は。 
 書き出すとまた長くなりますから、このへんで。
 
 あと、ちょっとだけ。
 ここからは僕の無責任な答えをこじつけるイイワケになってしまいますかな。
 大河 新撰組の裏話なんですが、脚本を担当した三谷 幸喜さんは役者と役柄のマッチングを重視したそうなんですよ。
 つまり、役柄の人物がいかに生きたのか。勿論、多くは想像に頼らざるを得ませんが、例えば、香取 近藤や耕史 歳三は恐らく何らかの芸能界における関係もあったのでしょうが、三谷さんは、香取さんや山本さんのこれまでの人生の中に近藤や土方の実際(?)の生き様に共通するもの(両方、実際のエピソードをお持ちのようです)を感じて、そこからリアルな台詞づくりをされたそうなんですよね。
 現代人である香取 真吾さん、山本 耕史さんが演じる近藤、土方。その表情から、おっこれだとしっくりくるような自然な台詞づくりを追求された。
三谷氏、幕末好きということで相当、力を注いだお仕事だったらしく、この二役に限らず他の役柄と役者さんにも凝ったというお話です。

 それで何故に大河以蔵が金子さんなのか?
 元々、モデルから役者に転向された金子さん。役者のイメージが強いその彼が2000年以降、いきなり格闘技界に体当たりしたというのがありましたね。しかもかなり真剣に取り組まれたということです(その途中経過や結果はこの際、抜きにしましょう)。
 これは現実の金子さん。
 それと映画の中での話。リターンでの金子さん(結構前の作品なので観てみてください。お若い!)は、お笑い芸人やったり、売れなくて嫌気がさしたのか、おやくざさんと喧嘩をしてみたり、それで本職になったりもします。
まあ破天荒というか流転の人生ですね。
それが映画ラストで結ばれる。二人はまた高校時代と同じように二人乗りで昔の自分と今の自分を感じるわけです。バカばっかりの青春を生きた二人は、結局はもう一回それを繰り返してグランドに戻ってきた。
そこで出たさっきの台詞。
結局、著作には出しませんでしたが、このマーちゃんの台詞をどこかで以蔵に言わせたかった。それを違った場面ではありますが、金子さんが演じてらした。
それですね、決め手は。

草々
 だいぶご無沙汰してしまいました。柏木 龍世でございます。
 まずは皆様、ブログやメルマガ、更には著作に触れていただき、本当にありがとうございます。発売から約一年が経とうとしている著作「人斬りの業」でございますが、皆様の応援を頂戴し、僕共々元気にがんばっております。

 さて、最近で気になる話。
僕は映画やお芝居が好きで時間を見つけては劇場に足を運ぶようにしてます(歴史だけではないですよ。現代劇も大好きです)。見逃してしまった時はツタヤさんのお世話になりますね。
 中でも三谷 幸喜脚本作品のユーモアと北野 武監督作品のギャップには、毎度、脱帽するばかりです。お二人の共通として感じることは、カット割、場面接続、台詞の緩急、役の連携などなどでしょうか。そうして、あっと驚くエンディングがいつも楽しみです。
 三谷作品、映画ですと「The Magic Hour」が好評上映中(まだ見ていませんが、CMだけでも楽しそうですね)ですが、やはり僕の場合ですと、「警部補 古畑 任三郎」シリーズが記憶に残っています。
 これまで、シリアスと緊張感の連続という構成だった刑事モノが、一変してユーモアと取り入れた犯人と古畑の舌戦という型破りな一つのジャンルになってしまった。また、最初に犯人と犯行に関連するコアな場面から始まるという構図は、まさに掟破り。
 その過程で古畑がいつ容疑者を犯人として警戒するのか、そのきっかけがまた思いもよらないアイテムやちょっとした会話やそぶりからだったりするわけですね。最初から犯人もカラクリもわかっているのに、ラストにはいつも驚かされる。演出の鬼才 三谷 幸喜。

 北野映画というものは、「世界の北野、足立区のたけし」とはどこかの番組にもありましたが、まさにいきなり世界規模のそれになってしまったというところが凄い。
 僕はお笑いも好きでして、小学生の頃だと俺たちひょうきん族(漫才ブームの末期でしょうね)、中学生からはダウンタウンの深夜番組をあくびしながら見て大笑いしてました。
けれども、ビートたけしの笑いの感覚がどこか作品の中にも出てきてしまう。それほど根強く心のどこかに残っているのだと思います。
 映画「座頭市」をラスト、タップダンスのお祭りシーンにもっていけるのはやはり「たけし流」しかなしえない展開ではないでしょうか。それでもご本人、
「あれ、やりたかったから、全部を合わせてひっくるめたんだよね」
というような内容を語っておられました。笑いの戦略家 北野 武。

 ちなみに僕の場合も全くそうでして、今回の著作というものも、実は長々とした長編(おかしな言い方ですが)から以蔵のハイライトシーンをまず選り抜いて、飽きない構成にするために彼の周辺人物をぽつぽつ(途中で竜馬が出すぎとの声も多く頂きましたが。誠にどうもすみません)と出てもらって、がんばってもらいました。
 ですから、僕の中にも幕末史の中で、
「これを書きたい」
という場面がまだまだいくつもあります。それが史実とは全く異なっていても、幕末という舞台の中で繰り広げられたいくつもの感動場面、名場面をこれから先、読者の皆様に鮮烈に想像していただきたいがためなのです。
 歴史研究家ではない僕にしてみれば、多分にエンターテイメントの要素を盛り込んだ時代小説を書き続けていくことが、努めだと考えます。
 試験に必要だから歴史を学ぶ。それも一つですし、この入り口が最も広い間口なのではないでしょうか。そこから皆様は好きな歴史時期について興味を抱いていく。
 ただ僕は、歴史が持つ意味というものは更に広く、深く、味わいのあるものなのではないかと感じます。
 一言させていただきますと、
「歴史を体得する」
 現代に生きている僕たちが今、これから先に、
「これだ!」
 これをしたかったんだ、という実感を得るために、その意味があるのではないでしょうか。先達は、それを歴史の中に確かに刻んでいると思います。それを自分なりに吸収して、体現する。そういった意味で歴史は、間違いなく現在でも生きていると考えるのです。
 
話は大分それてしまいましたが、ひとつ題名に戻りましょうか。
 先日、2010年の大河ドラマの発表がありました。
「龍馬伝」
 単刀直入な題名ですが、この視点が面白い。
龍馬の生き様を伝える。これを何と岩崎 弥太郎の視点からやってしまうとのこと。これは面白いと思いますよ。
 弥太郎の家 岩崎家は、もともと土佐の郷士でしたが、父の代で武家の株を売却して地下浪人に没落し、弥太郎は長らく不遇の時代を過ごすことになります。
対して龍馬の坂本家は、城下でも指折りの富商となり武家としての家格も持つ、言ってみれば彼は金持ちのぼんぼんですね。
 そんな二人は青春期をほぼ真逆の立場で過ごしていくわけです。
 龍馬は盟友の武市から土佐勤皇党に誘われるも、それを蹴って自由人となり全国を渡り歩きます。様々な出会いに誘われ、果てに薩長同盟や船中八策など時代を動かした驚天動地の奇蹟を実現させていきます。
 弥太郎の青春期。ある時、父が罪人に仕立て上げられたのと同じくして、一度は牢獄生活も送っています。こう言ってしまうと何やら彼がワルのキャラクターになってしまいそうですが、弁護するならばこれは当世の法治体制の矛盾や理不尽に対する若い反抗だったのではと思います。
彼らの母国である土佐藩は、ことのほか武家階級での差別意識が濃厚で、江戸時代の開幕から土佐入りしてきた勝ち組の山内家と大戦に破れて滅亡した長曾我部家の間には、決して拭えない格差があったといいます。
 それを龍馬も弥太郎も痛切に感じていたようです。
 だからこそ龍馬は、維新の世に平等というものを求め、自由競争主義を掲げたアメリカ社会に憧憬の念を抱いたのでしょう。
 僕はこの点で弥太郎と龍馬は共通しているのではないかなと思います。
 海と黒船、そして巨大な商売。
 維新の世に足を踏み入れた弥太郎は、亡き龍馬の想いを見事に実現したのではないでしょうか。
明治六年には三菱商会を立ち上げ、一代にして現代まで連綿と続く三菱財閥の基礎を確立しました。不遇の青春期を悔やむことなく前進を続けた弥太郎の人生に坂本 龍馬という男の影響はかなり大きなものがあったと思われます。
 弥太郎が牢人として生活している最中、龍馬との出会いがあったといいます。そこから始まって、二人は決して幕末史では直接的な関係は深くはなかった。同じ道を行くでもなし、むしろ、反発し合うそれであったろうと思います。
 ただ、世界を視野にいれた巨大な商売を目指す者同士という関係はあったのでしょう。

 果てさて長々と駄文を書いてしまったものですが、気になるのはやはり俳優陣でしょう。
こちらは未発表ですが、今回からつらつらと想いを馳せながら、誰が龍馬か?弥太郎は?
更に私的な事情ですいません。以蔵には誰がいいかなど。僕の私見で恥ずかしながら、
「龍馬伝ハマリ役は誰か論」をお話していこうかなと思います。
最近テレビでこんな番組を見たことがありますが、役者さんの風貌のみならず、他の役で見せた「おっ、これ龍馬に似てる」的な個性なんかもわあわあ話しあってみましょうよ。
ちなみに、今回はまず勝手ながら、
「以蔵」
 危ない目つき、凄みさす男前。けれども絹のように綻びやすいハート。まだまだ彼の個性って山ほどあるのではないでしょうか。
 個人的には、浜ちゃん 龍馬と反町 以蔵のコンビは面白かったなと思います。これも三谷ドラマでしたね。
 すみません、ちょっと話しすぎました。
 それでは次回、僕も新たな答えを持って参加させてもらいます。
草々 龍世

テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

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プロフィール

柏木 龍世

Author:柏木 龍世
(かしわぎ りゅうせい)
日本大学商学部卒業後、一般企業へ勤務。後に料理人を目指し転職。
途中、戦国時代より伝わる煎茶道に入門し、更に室町時代より続く古流剣術を修行する。
様々な文化活動を展開しながら、幕末史に触れ研究を開始。同じく作家活動に入る。
斬新な視点から幕末史を斬り、新時代の幕末小説を執筆。

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